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日本人がエコノミックアニマルと呼ばれ、世界で最も勤勉だと言われていたのも今は昔。実は僕らの労働時間は日に日に短くなっており、特に先進国の中でも「働かない国」になっています。労働時間の減少はよい意味で社会に様々な可能性をもたらします。今回は、「労働時間減少」をさらに加速する週休3日制について。
本当に日本の労働時間は減っているのか?
週休3日制の話をする前に、本当に日本の労働時間は減っているのかを確認しましょう。ここ数十年間、総労働時間(青い折れ線グラフ)も所定内労働時間(赤い折れ線グラフ)も見事に右肩下がりであることがわかります。

所定内労働時間はピーク時と比較しておよそ500時間減っています。これは、1965年に松下電器産業(パナソニック)が週休二日制を導入、その後1980年ごろからほかの企業もあとを追いますが、その影響で年間の休日数が40~50日増えたことが非常に大きいでしょう。逆に当時の大人は週に1日しか休みがなかったのか…と考えると頭が下がります。
海外で普及する週休3日制の働き方
詳細は割愛しますが、スコットランド、アイスランド、イギリス、フランスなどの西ヨーロッパでは、会社単位、国単位それぞれで週休3日制の導入や議論、さらには実証実験が進んでいます。会社単位ではアメリカの会社も多くの会社で導入が進んでいますし、日本でも一部企業(塩野義製薬、ファーストリテイリング、Zホールディングス、600、みずほ銀行など)で導入が進められています。
日本と海外の大きな差としては、海外では「1日8時間、4日間働くんだから、合計32時間労働でいいよね」という、労働時間そのものを短くしようとする試みであり、かつ給与を下げないこと。
日本では、1日10時間で4日間、合計40時間だから今までと同じ、というパターンや、みずほ銀行のように休みが増えた分ダイレクトに給与が下がるといったパターンがまだ多いようです。
海外では労働時間そのものを短くしても労働生産性は下がらなかったという結果も多く出ているものの、各国、各社それぞれがまだ模索している段階だと言えるでしょう。
週休3日制は日本全体、会社単位それぞれの生産性を上げる
まず国全体から考えてみましょう。日本は2008年に人口がピークを迎え、これからどんどん減っていきます。単に人口が減るだけではなく「少子高齢化」という状態で、現役世代に対して社会保障費が重くのしかかる構図が加速します。
その解決のためにはできるだけ「労働」にたくさんの人に参加してもらう必要がある、つまり社会保障費を支える現役世代を増やさなければならないわけですが、残念ながら少子化がなかなか解決できません。さらに、解決できたとしてもその子供たちが現役世代として仕事を始めるまで20年かかります。そんなに待ってはいられません。
ここで日本の現役仕事人を減らす大きな要因を2つ挙げます。1つ目が「女性の社会進出」で、2つ目が「介護離職」です。
ご存じの通り日本は女性に対する、キャリアにおける差別と、家庭内の役割の差別が大きいため、社会進出の妨げになっています。週休3日制にすることで、男性がより家庭コミットする、女性は仕事を続けたまま家庭や子供のケアができる、という状況を作りやすくなります。
もう一つの介護離職問題ですが、大和総研の調査によると、介護離職は年間10万人。その割合は女性が多いものの男性の割合が急速に増え、さらに正規雇用社員の離職がアルバイトやパートスタッフのそれを超えた、という状況にあります。これから先高齢者が増えると、急速に介護離職も増え、その数は数十万人になることも予測されています。これも週休3日制にすることで、高齢世帯のケアをする時間に余裕ができ、仕事との両立がしやすくなる可能性があります。
なぜ週休3日制にすると会社の生産性も上がるか
これは非常に単純な話で、労働はどんどん複雑化・高度化しており、勉強したり休息したりする時間が必要で、休みなく働き続けると生産性が落ちるためです。
もう一つは、女性の社会進出や介護退職と働き方が関係しているという前提を置く場合、優秀な人材が採用できない、または離職してしまう、というリスクがあるためです。今後人材がさらに減少する社会において、「人材が確保できない会社」に明るい未来はありません。
いつ週休3日制が浸透するか
ようやく本題ですが、個人的に週休3日制が浸透するまでには5~10年ほどであると見ています。週休2日制が「浸透した」と言えるレベルをどう定義するかによりますが、週休二日制は浸透するまで30~35年かかっています。しかし当時はインターネットもなく、他社の状況や、週休二日制にしたことによる生産性の変化などが可視化されにくい社会でした。
一方で現在は、様々な情報が可視化されやすくなったこと、そしてコロナ禍の影響も世代・時代的な問題もあり「働き方」に関して労働者側がかなり敏感になっていることもあり、浸透ははるかに早いだろうと考えています。特にこれから先はいわゆる「勝ち組と呼ばれる高収益企業の週休3日制導入」が急速に進むと思われます。そうすると、収益で劣る競合企業や、採用力で劣るスタートアップは追随せざるを得ません。なぜなら、優秀な人材が採用できずさらに差がついてしまうからです。みなさんの会社はいかがでしょうか?もちろん業種によっていつ週休3日が普及していくかに差はあるでしょうが、どの業種にとっても避けられないテーマであると思います。