「起業に必要な準備」ってなんだろう、NGパターンを並べてみる

僕は今まで、ITを軸に4社の立ち上げ、1社の経営、そして現在5社目として動物病院の経営を行っています。経営関与も含めて携わった5社(動物病院除く)のうち、4社は現在も操業中で、順風満帆とは行かずとも、長い会社はもう20年近い業歴になります。その経験から、「起業の準備をする、いつか起業する」という人のうちNGなパターンについて考えてみたいと思います。

NGパターン「30歳になったら起業する」

このパターン、非常によく見かけます。個人的には最もNGなパターンだと思っています。なぜならば、論拠がほぼないからです。30歳までに人脈を、資金を、経験を…と言いますが、明確なマイルストーンを設定していたり、具体的な経験をしていたりするケースはほとんどありません。漠然と「今じゃないけどいつか何かあればもしかして」と言っているにすぎません。

また、マーケットを見ていないことも問題です。この人がいつ30歳になるのかは、その時にマーケットがどうなっているのかと全く関係がありません。業種ごとに「いま起業すべき」とか「いまは見送るべき」というタイミングが少なからずあるはずで、自分本位に時間軸を設定するのは誤りです。

NGパターン「良いアイデアが思いついたら起業する」

起業において「良いアイデア」というものはほぼ存在しません。Googleは12番目の検索エンジンだったと言われています。Facebookは10番目のソーシャルネットワークだったと言われています。

つまり「検索エンジンという素晴らしいアイデアが思い浮かんだから起業した」わけではありません。マークザッカーバーグも

「Facebookは僕が作った最初のプロダクトではない。掲示板も、コミュニティサイトも、チャットサービスも、様々なものを作っては失敗した」

と話しています。思いついたアイデアに熱量を乗せて第一歩を踏み出すこと、歩み続けること自体は悪いことではありません。しかし、そのアイデアがまっすぐそのまま成長していくことはほとんどありません。否定され、修正し、それを何十回と繰り返してようやく世の中に受け入れられるサービスや会社になっていくのです。いつかアイデアが降ってくることを待って起業しない、というのが悪手であることは言うまでもありません。

NGパターン「周りの人が起業することを止めるから起業しない(賛成してくれれば起業する)」

周りの人が起業を止める理由はいくつかのパターンに分けることができます。

一つ目が、あなたと距離の遠いところにいる、友人知人レベルの人達が止めるパターンです。これはほとんどの場合、ドリームキラーと呼ばれる、あなたが具体的な一歩を踏み出すことを恐れていたり、羨ましくて、足を引っ張るために止めているケースです。きっと、なぜやめたほうがいいのか理路整然と説明してくれるでしょうが、聞く価値があるケースは稀です。

もう一つが、あなたと本当に距離の近いところにいる人、例えば妻や夫が止めるパターンです。こういった人たちが起業を止める場合は、耳を傾ける必要があるかもしれません。なぜなら、彼ら彼女らは、普段のあなたが怠け者だったり、努力や継続ができなかったり、事業に必要なリスクを取ったりすることができる人間ではないと、あなたがあなたを知っている以上にあなたのことを知っていて止めている可能性があるからです。

あと、本当に起業する人はだれが何を言ってもどんどんやってしまうものなので、他人のせいにしている時点でおそらくやめておいたほうがいいです。

NGパターン「十分な資金/人脈/スキルを手に入れたら起業する」

これは一部の業種、例えば専門職だったりする場合は必要なことである場合があります。例えば僕が経営している動物病院などの業種でもそうです。数年の下積みで起業(開業)するべきではない、しっかりと診療に責任を持てるようになってからするべきだ、と思います。

一方で、ほとんどのケースでは足りないもの(資金や人脈)は言い訳にしかなりません。逆に、資金や人脈が本当に足りない場合、1年間全力で努力して手に入らなければ5年経っても手に入ることはないでしょう。例えば資金が5千万円必要で、それを調達する手段は貯金以外にも複数あるわけです。銀行の融資を受けるにはどうしたらいいのか、投資家から出資を受けるにはどうしたらいいのか、ほかに貸してくれる人はいないだろうか。1年間全力でやって「3千万円が限界だった…」という状態であれば、あと半年準備に充てて、5千万円調達してから事業を始めればいいんです。今すぐ動かず、十分に必要なリソースが手に入る、ということはありません。

起業の第一歩は「起業家と友達になること」かもしれません

ドラゴン桜という漫画で、「甲子園常連校は、後輩が先輩を見て、このくらいの才能の人がこのくらい努力すると甲子園に行けて、この程度活躍できるのか、という肌感を持てる。東大常連校も同じ。周りにそういう体験している人間を持つと、自分に何がどの程度足りないのかがわかる」という主旨のセリフが出てきます。

逆に、誰も甲子園に行ったことがないと、努力して実力が上がっても、夢に近づいているのか、遥か遠くで全く実現可能性のないおとぎ話をしているのか、把握しようがありません。

起業もこれに近い部分があると思います。起業している人全員が超人なわけではありません。また、今大成功している人も、創業したばかりのことは全然業界のことがわかっていなくて、2年目に入るころには「俺、もう辞めようかなと思ってるんだ…」と泣きながら相談してきたりしていた、なんてこともよくあります。

まずは周りで起業している人を友達にする。実は起業をかなえるにはこれが一番の近道かもしれません。