国が推進している、世界で戦えるスタートアップ支援の「J-startup」というものがあります。2年前には141社中、北海道の企業はわずか1社しかなかったそうですが、今日現在では25社まで増えています。分母も増えていることと思いますが、それを加味しても素晴らしい躍進ぶりです。
なぜアメリカはIT革命で大成功したのか
日本は、第三次産業革命とも呼べる産業のIT化にうまく乗ることができませんでした。IT革命の恩恵を世界で最も受けたのは言うまでもなくアメリカで、それはコア技術の開発(例えばインターネットであればTCP/IP)に成功し、さらにそれに乗っかるOSやブラウザの開発に成功し(モザイクやInternetExprore)、さらにそれに乗っかるアプリケーションサービスの開発(FacebookやGoogle)に成功し、という一連の流れがあるわけで、いきなりGAFAMが出てきたからすごい、という話ではないし、なぜ日本はGAFAMが創れなかったか、みたいな話にもあまり本質的な価値はないように思います。
「DXで産業が復活」はウソ
いま日本ではDXが大流行しています。確かに、DXをすることで既存産業の競争力を上げることは、今後の競争ではMust要件であると言えるでしょう。とはいえそれは、世界的な潮流から言えば「最低限の最低限」の話であって、DXによって日本が国際的競争力を取り戻すことはないでしょう。
そして、そのDXでさえ日本は世界にかなり遅れを取っています。日本の国際競争力は本当にどんどん落ちており、数十年単位で憂き目を見る可能性も十分にあります(というかなっている?ほぼ確実?)。
第四次産業革命→AI化に勝ち筋はない
第三次産業革命と呼ばれるIT革命には見事に乗れなかった日本ですが、第四次産業革命と呼ばれるAI化はどうでしょうか。一部の企業は十分に勝ち、世界でも戦っていける可能性があると思います。例えばAIの中でも基礎技術の開発や研究に強いプリファードネットワークス社なんかは、正直国内ではなかなか他社の追随を許さない強さを持っています。ただし、AIの実装・開発面で重要な「データ収集」において、日本は圧倒的に弱いのです。
アメリカはGoogle、Facebookなど超巨大IT企業が、莫大なユーザーデータを保有しており、それをそのままAI開発に活かしています。Amazonのレコメンド(おすすめ)機能なんかは目を見張るものがあるでしょう。
また、中国は人権とかモラルみたいなものの議論をぶっ飛ばして、大量のデータを取得、AIの開発にいそしんでいます。例えば下記はWSJのニュースになった2019年のものですが、小学生にヘッドバンドを付けさせて、どの程度集中しているかなど勉強のパフォーマンスを測る機械です。日本で「じゃあヘッドバンドを付けて授業を受けてください。AIが集中していないと判断した生徒は評価が下がります」なんてこと、できるはずないですよね。

第五次産業革命、バイオテックは酪農王国であり学園都市北海道の希望
第五次産業革命、とすでに呼ばれているものがあります。それはバイオテクノロジーの活用です。これは人間の医学をベースにした長寿化や機能強化にとどまらず、食品製造、畜産・酪農など、植物を含む「生物」の幅広い分野に及ぶでしょう。
人間はもちろん自身の病気の治療や長寿化に強い興味を抱いていますし、今後人口増加によって起こる食料資源の不足の解決など、人類の根本的な課題を、世界規模で解決できる可能性を秘めています。そのためには、基礎技術の開発からまずは実現する必要があり、これは特に大学に期待がかかる分野です。酪農王国である北海道には、優秀な農学部、生物系学部を抱える大学が複数あります。
ここから10~30年はAIが産業に革新を起こしていく時代で、残念ながら日本がそこにうまく乗れるかはわかりません。しかし、20~50年後、バイオテクノロジーの覇権を日本が、いや、北海道が握れる可能性というのは十分あるのではないかなーなんて思ったりします。札幌のスタートアップ支援の立場にある方々は、ぜひ成熟期~衰退期にあるIT産業の支援だけでなく、AIの基礎開発や、バイオテクノロジーにももっと目を向けて、数10年単位での支援を実現していってほしいなと思います。成熟期~衰退期だからこそ目に見えた業績が出ているタイミングで支援したくなる、ファンドが10年で償還だからバイオテクノロジーのような長期技術には投資できない…という事情も分かりはしますが、そこは何とか頑張ってほしいです笑
僕の会社は小さな獣医療の会社で、バイオテクノロジーや数十年後のコア技術の開発にはまだまだ貢献できるような状況にありませんが、この目で北海道発・コア技術の開発と、それが世界を変えていく様子が見られる日が来るかもと思うと、この地の可能性は本当に大きいなとワクワクしますね。