イーロンマスクの課題設定「壁の外の巨人はどこにいるか」

- 目次 -

  1. 「壁の外の巨人はどこだ?」
  2. イーロンマスクの「巨人」はどこにいたか
  3. なぜインターネット、クリーンエネルギー、宇宙開発なのか
  4. 2020年代、「巨人はどこにいるか」

宇宙開発企業スペースXの創設者およびCEO、電気自動車企業テスラの共同創設者であるイーロンマスク。2019年にフォーブスが発表した「アメリカで最も革新的なリーダー」では1位に選出されています。そんな彼はなぜ今の事業分野にフォーカスしたのか考えてみると、これから先、あなたが「どうやって人生を賭ける仕事に出会えるか」のヒントになるかもしれません。

「壁の外の巨人はどこだ?」

僕が人生で最も好きな漫画で、「進撃の巨人」というものがあります。人類は巨大な壁の中から一歩も出られず家畜のような生活を強いられています。なぜなら、壁の外には人間を食う巨人が無数にいて、大変危険だからです。

この巨人を討伐し、自由を手に入れるために活動する「調査兵団」と呼ばれる人々が漫画の主人公なのですが、彼らは地位も名誉も気にすることなく、人類にとっての最重要課題である「巨人討伐」に果敢にも挑んでいきます。

権力争いも派閥闘争も、すべてが彼らにとっては些末なこと。とにかく巨人がいない世界を実現したい。それこそが最も重要なことだと彼らは知っているのです。

ファミ通ウェブサイトより

イーロンマスクの「巨人」はどこにいたか

つまり、巨人とは人類にとって最大の関心ごとであり、どうしても解決しなければならない課題であると捉えることができます。そして人は、その解決のためであれば無我夢中で命を懸けて戦うことができる(人もいる)。

できることならば、そんな「天職」に出会いたいものです。

ところで、イーロンマスクは、何を「巨人」、つまり人類にとって最大の問題と絞り込んだかご存じですか? 重要なテーマ3つを絞り込んでいます。

1994年に彼は、インターネット、クリーンエネルギー、宇宙開発の3つに取り組むと決意。それが人類の未来に最も影響を与えるテーマだと考えたからだ。

Forbes Japan https://forbesjapan.com/articles/detail/41516/3/1/1

今からおよそ30年前、わずか23歳でこのような結論に行きつき、実際にそれに関連する事業で今や世界をけん引する起業家になっていきます。

なぜインターネット、クリーンエネルギー、宇宙開発なのか

イーロンマスクはこの時点で、人間世界の果てしない成長→拡大→膨張を予見していたのではないかと思います。(ここから先は僕の個人的な推測です)

1994年、まだWindows95が発売される前の時点で、インターネットにより情報流通の革命が起こり、流通する情報量は飛躍度的に増加。産業はさらなる速度で成長することを予見します。

結果、人口の増加はとどまることを知らず、資本主義の自己増殖という性質と相まって、世界中で経済成長が起こります。その結末として、もはや地球が人類に食いつぶされると思ったのだろうと思います。それを少しでも先延ばしにするために、地球の寿命を延ばすためにクリーンエネルギーが重要であると考えた。

しかしながら、それだけでは不十分で、クリーンエネルギーだけでは人間世界の成長をカバーすることができず、やはり人類は地球を食いつぶしてしまうかもしれない。事実、今現在、そして今後、水資源、食料、鉱物資源などの不足が予測されています。そうなると、宇宙が重要になってくると。イーロンマスクはストーリーテラーなので「火星に移住する」というような言い回しをしますが、本当に火星への移住を考えているのか、資源の調達先として宇宙を見据えているのかはわかりません。

少なくとも、今からおよそ30年前、このような考えのもと、イーロンマスクは「巨人」、つまり人類にとってどうにかしなければならないテーマを「インターネット、クリーンエネルギー、宇宙」と定義したのではないかと僕には思えるのです。

2020年代、「巨人はどこにいるか」

時代は移り変わります。イーロンマスクが設定した巨人は、おそらく今も巨人としての脅威を持ち続けているでしょう。しかし、30年経つとやはり世界は変わってきます。

「世界人口推計2019年度版」では世界人口が今世紀末頃、ほぼ110億人でピークに達する可能性があるとされています。110億人になることによって世界の資源がどうなるか、つまり人類に世界が食いつぶされるかどうかはわかりませんが、少なくともあと数十年で人口がピークアウトするというのは、地球にとってはGood Newsなのかもしれません。

イーロンマスクの努力の甲斐もあって、テスラのようなクリーンエネルギーを動力とした車の普及や、インターネットを活用したより効率的な宇宙開発が実現しいつかは移住や資源調達も視野に入ってくるなど、30年前の巨人は、少しずつ弱ってきている印象も受けます。

では、今現在、まさに元気な盛りの「巨人」はどこにいるのでしょうか。あなたにとっての「巨人」はどこにいるのでしょうか。何歳になっても、願わくば調査兵団のような生き方に憧れていたいものだなとつくづく思うわけです。

講談社PRより