あなたの事業が最もうまくいく要素は何か:センターピン理論

事業を成長させるには、様々な要素が複雑に絡み合っています。セミナーもたくさんあって、何を学んだらいいのかわかりません。経営理論は複雑怪奇で、そもそも何の役に立つのわからないものばかりです。

そんな中、自分のビジネスを成長させるためのセンターピン、つまり、ボーリングで言うところの中央の一番前のピンですね。「これさえ倒せば大半のピンは倒せる」という、外してはいけないピンに狙いを定める、ということが事業を成功させるうえで必要不可欠です。

センターピンを決めることが7,700億円企業を創った

元グッドウィル・グループCEOの折口さんという方がいます。創業12年で年商7,700億円の会社を作ったというモンスター経営者です。この型が唱えたのが、まさにこれ、「センターピン理論」です。

重視していたのは「事業戦略」と「人事組織」。事業戦略では「センターピン」と「ブランディング」。
(人事組織は)どんな規模であろうと、小手先で組織は束ねられません。会社の哲学、経営理念をはっきりと打ち出して、社員に徹底させること。
「適材適所」と「人徳評価」がやる気を高める。経営者は常に新しい事業をつくらなければいけません。組織に希望が生まれ、活性化します。(一部編集)

https://inouz.jp/times/bvc2018-session-origuchi2/

全ての会社、事業で「事業戦略」と「人事組織」が重要とは限りません。グッドウィル・グループの折口さんにとってはそうだった、ということですね。

センターピンは「数字とか戦略の前に、お客様が求めている本質的価値」

折口さんはディスコの経営もしていましたが、そのセンターピンを「連日超満員にすること」と定めていました。内装や音響設備ではなく、とにかく連日超満員であること。これがそもそもお客様がディスコに求めていることだ、と。そのために無料の招待券を配るなどしたそうで、最初は赤字も出たでしょうが、センターピンを倒すことに成功しているわけです。「あそこに行けば盛り上がっている」という状態が作れれば、競合に勝っていけることになります。

ここを外すと、設備にお金をかけ出したり、価格を落としてみたり、客引きを増やしてみたりと、無駄なところに投資することになります。「御社のセンターピンは何か?」と問われたとき、さらっと「連日超満員であることです」とシャープな回答ができる人が果たしてどれだけいるでしょうか。

変化するセンターピンの場所、時代ごとに本質を捉える力

業種にも拠りますが、センターピンの場所は実は変化していきます。例えばコンビニエンスストア。コンビニエンスストアのセンターピンは、当初は品揃えでも品質でもなく「営業時間」でした。それは「セブンイレブン」という店名が表しています。当時小売店は10時とか11時に開始し、19時頃には閉店していたのに、セブンイレブンは文字通り「7時から23時まで営業していますよ!」という点をセンターピンにしたのです。

これが大当たりするわけですが、その後同様の戦略を模倣する競合が増えることによって、また、セブンイレブン自体も店舗数を増やすことによって、センターピンの場所が変わります。営業時間だけはなく「近いこと」がセンターピンになっていくのです。いかに営業時間がほかの小売店より長かったとしても、もはや近くにないと選ばれない。だって同じ営業時間の競合が近くにあるのですから。こうして、コンビニエンスストアのセンターピンは営業時間から近さ・距離に変わっていきます。

ところが、コンビニエンスストアのセンターピンはまたしても変化します。「どこも24時間やっているし、どのコンビニも近くにある」という状態になってしまったのです。結果、コンビニは商品開発戦争に突入します。うちのスイーツが一番おいしい、いや、うちのから揚げが一番おいしい!と、「わざわざ選んでもらう」ための戦略として、現在のコンビニエンスストアは商品開発に注力しています。

おまけ:コンビニは拡大するか、効率化するか

センターピンが事業にとって大変重要であること。そして時代によって変化することをお判りいただけたのではないかと思います。そのうえで、一つ考えてみたいことがあります。商品開発戦争が終わった後のコンビニ、次はセンターピンはどうなるでしょうか。

コンビニには、テナントの広さという物理的なキャパシティがあります。今後その広さの中で、いかに多くの商品を取り扱えるかがポイントになってくるのではないでしょうか。

そのためには、コンビニのほとんどは無人店舗化し、それゆえに休憩室や有人レジの場所も不要、結果陳列効率が上がってより多くの商品を取り扱ったり、そのコストが商品価格に反映されて下がっていく、ということになっているかもしれません。皆さんはどう思いますか?