「若者、バカ者、よそ者: イノベーションは彼らから始まる!」という本があります。恥ずかしながら僕はこの本は読んだことがないのですが、確かにイノベーションは若者、馬鹿者、よそ者から生まれるんだろうなと痛感します。今回は、動物医療業界において完全によそ者である自分の体験を少し語ってみようと思います。
「若者、バカ者、よそ者 」とはつまり?
まず言葉の定義からスタートします。
若者というのは、単に年齢が若い人間のことを指していません。この言葉は「柔軟性」を示しています。
次にばか者というのは、当然ですが頭が悪い人間を指しているわけではありません。この言葉は「(その業界の)常識を持っていない」ことを示しています。
最後に「よそ者」ですが、これも単に「外の地域から来た」とか「別の業種から来た」ということを指しているわけではありません。これ結構重要なポイントだと思っていて、何を指しているかというと「別の世界の有用なナレッジを横展開してくれる人」を示しているんですね。
※だから、単に外の地域から飛び込んできた人を「地域おこし協力隊」に任命してその地域の未来を託す、みたいなのが成功事例少ないのは、財政とか大人の話もあるんですが、そもそも論なにも分かってない自治体のおじいさま方が多すぎるんだと思います。あの制度どうしようもない…。
そして、イノベーションを起こすのは、どれか1つではなく、基本的には複数の要素を持っていることが望ましいと考えられます。アメリカの場合、例えばFacebookの創業者マークザッカーバーグがいた場合、彼は「若者」であり「ばか者」であったと思いますが、特に「よそ者」ではありませんでした。彼の成長の裏側には、投資者という形でショーンパーカーという「よそ者」が必要で、資金調達やスタートアップのグロースについてのナレッジが非常に重要だったんだろうと思います。このように、複数の要素は複数人で分担することも可能、というかそっちのほうが効率が良いです。
そもそも論:イノベーションは必要か?
結論、イノベーションは今の日本においてはどの業界においても必要です。これ以上なく必要です。人口が減り少子高齢化で、構造的に経済成長が望みにくい環境にある日本において、次なる豊かさを引っ張る存在は間違いなくイノベーションです。効率化やDXは足腰を支えることはあれど、急激な成長を創ってはくれません。
また、「これ以上の物質的、経済的な豊かさはそもそも必要ない」という論もあるかと思いますが、これは資本主義社会において、競争社会において、そこから降りる宣言を明確にしない限りはなかなか生きにくい人生になります。
結論、イノベーションを起こすことが、日本が豊かで幸せで、治安が良く他人を思いやれる社会を続ける手段として最も有用なのです。
若者、バカ者、よそ者 、になれるか?
ではそのイノベーションを起こすためには「若者、バカ者、よそ者」で在れとのことですが、「自分はそんな風になれない」と考えるのは早計です。
実は日本人が最も苦手なのが「若者・バカ者」になることです。なぜなら、日本人の同調圧力は非常に強く、柔軟であることや、コミュニティ内の常識を軽視することを非常に嫌うからです。これ、僕もアラフォーになって感じますが、どんどんその同調圧力に同調してしまう、理解してしまう自分がいて恐怖を感じます。
一方で、一番簡単なイノベーションの起こし方は「よそ者」になることです。これは、環境をドラスティックに変えれば勝手に自分はよそ者になります。例えば僕は獣医療と全く関係ない領域から獣医療の経営を始めましたが、よそ者も良いところで、何もわかりません。そして、よそ者になると、ほぼ間違いなく「バカ者」になります。何もわかっておらず、その領域の常識を持っていないからです。結果、若者にもなります。なぜなら「え?それおかしいですよね?こっちでもよくないですか?」と柔軟な新しい視点を持てるからです。
よそ者起業、のススメ
世の中の起業の多くは「若者起業」か「バカ者起業」です(ディスっていません、むしろ成功している起業パターンの特徴です)。しかし、若者起業かバカ者起業で成功するのは、めちゃくちゃ頭が良くて、かつ運も非常に良いケースに限られます。これは間違いない。
なぜなら、さすがに柔軟な頭で既存の常識を無視しても、その程度では既存のプレイヤーには勝てません。そこに、ものすごい深い洞察、仮説があり、マークザッカーバーグを支えたショーンパーカーのような支援者がいて、時の運を得て初めて成功するのです。並大抵ではありません。
しかし、「よそ者起業」は30~40代の、働き盛りにこそ可能な起業方法です。今まで培ってきたナレッジは、別の領域に展開するととんでもない価値を持ちます。事業のコアとなり、成長のコアとなり、今まで見たことない景色を見せてくれます。そのために必要なのは、①市場選択の洞察、②飛び込む勇気、➂最初のきっかけとなる人脈、の3点です。
これから先の未来、会社にしがみついても定年まで行けるかもしれませんが、問題はその不透明さがものすごく高まっていることです。今までは60歳までの将来を見通すのが簡単で、逆に「見えてしまうことで退屈さを感じる」レベルでしたが、今後は定年まではしがみつけたとしてもどうなるか全くわかりません。不遇を喰らうことも多いでしょう。
そんな時、「よそ者」として起業してみる。今までやっていた事業の延長線上ではなく、まったく違う路線で起業してみる。そんなよそ者起業、いいんじゃないでしょうか。